度重なる断交、総統「共通の限界ライン守れ」

790

中華民国政府が21日午前、エルサルバドルによる資金援助の要請には応えられないとして、国交断絶を宣言した。外交部によれば、同国の求める資金は港湾建設に関するものだったが、専門の技師団を派遣して調査した結果、経済的な支援は中華民国とエルサルバドルのいずれもを債務危機に陥れる可能性が高いと判断した。

 

また、エルサルバドルで来年2月に行われる大統領選挙で不利が伝えられる同国与党の選挙資金の提供も求められていたが、外交部は、民主主義の原則に反するとしてこの要請も拒否した。エルサルバドルが中華民国との断交に傾いたことを受けて中華民国政府は関係維持を図ったものの、21日、大勢は決したと判断して断交を宣言した。

 

蔡英文・総統は午後になって臨時記者会見を開き、談話を発表した。

 

蔡・総統は、関連の情報は以前からつかんでいたとした上で、エルサルバドルが中国大陸との外交戦争の場となるのを回避するため努力してきたが、中国政府は圧力をかけ続け、エルサルバドルとの断交で台湾の人々が国際社会に歩みだそうとする意志をくじこうとしたと説明。蔡・総統は、中国大陸側の軍用機による台湾本島周回、世界の航空会社に対する台湾の呼称変更要求、台中市でのユースゲームズ開催取り消しなどを挙げて、中国の台湾に対する圧迫はなんら変わらず、いたるところで行われていると警戒した。

 

蔡・総統は、現在の中国は台湾海峡両岸の平和に対する脅威であるばかりでなく、各国内部への干渉や国際秩序の破壊を通じて世界の情勢不安を引き起こしていると批判、国際社会に対し、事態は切迫しており中国の行いをこれ以上容認すべきではないと呼びかけた。

 

蔡・総統はさらに、現在の両岸関係はもはや両岸だけの問題ではなく、地域の問題だと指摘、中国のアジア地域に対する野望は従来の秩序への挑戦、さらには新たな国際秩序をリードすることにあり、貿易摩擦が激しくなる中、中国は台湾への圧力を強めて、この地域における影響力と実力を際立たせる事を狙っているのだと分析した。

 

蔡・総統は、中国が台湾の主権を脅かそうとする力は過去と比べ物にならないほど強いとした上で、中国の要求と行いはすでに台湾の各主要政党の我慢の限界を超えていると主張、今は互いの両岸政策を比べている場合ではなく、団結し、台湾の主権として譲れない共通のラインを力を合わせて守るべきなのだと呼びかけた。

 

蔡・総統は、「中華民国(台湾)」の名義による外交関係が崩されることは我々共通の限界ラインを超えると主張、中国が我々の友好国に圧力をかけ、中華民国との断交を中国との外交関係樹立の前提とすることは我々の主権に対する侵犯行為だと批判した。蔡・総統はさらに、「中華民国(台湾)」は現状かつ現時点での最大公約数で、台湾の人々が団結する基礎であるとの見方を示し、団結しなければ中国に向けて明確なメッセージを示すことが出来ず、それは中国側が台湾の人々の限界ラインを誤って判断することにつながる他、台湾の政党と政党の間、政治家と政治家の間を分裂させることは可能だと誤解することにもつながると危惧した。

 

そして蔡・総統は、過去2年、台湾の人々は威嚇を受けようが自由民主や国際社会に貢献する決意を放棄しないことを世界に証明してきたとし、今後も理念を同じくする国々と連携し、制御を失いつつある中国の国際的な行為に対抗していく考えを強調、同時に、友好国が中華民国台湾との長期的な友情、並びにそれぞれの国の実質的な発展のため台湾が果たしてきた貢献を大切にしてくれるよう求めた。

 

蔡・総統は最後に、圧迫されればされるほど団結が必要で、国際社会に歩み出さねばならないのだとして、一致団結して数々の難関を乗り越えていくことを呼びかけた。